明治の衣裳箪笥 ビフォーアフター
山形県山形市在住/山口様/30代女性
明治の商家に遺された箪笥を、未来の暮らしへ
― 古民家再生とともに受け継ぐ、時代の記憶 ―
古民家改修計画に伴い、蔵や倉庫に遺されていた多くの道具類の整理が進められていました。
ご依頼主の旧家は、明治期に雑貨商を営み、官公庁から個人顧客まで幅広い商品を取り扱い、地域の商いを支えた家であったと伝えられています。
蔵の二階には、当時の輸送に用いられた木箱が数多く残されていました。
明治中期、山形にも鉄道網が整備され、都市から様々な物資が運び込まれるようになりました。
それらの木箱は、近代化の息吹と、商いの繁栄を今に伝える貴重な痕跡です。

その蔵の中に、明治期の衣裳箪笥を中心に、七棹ほどの時代箪笥が遺されていました。
これらは、ご先祖の生活用であると同時に、商いの商品や帳場用品の分類・収納・保管にも用いられていたものと推測されます。
同時代・同形式の箪笥が複数遺されていることは、この家が当時、確かな商業活動を営んでいた証でもあります。
ご依頼主は、これらの時代箪笥を処分するのではなく、古民家の再生とともに、現代の暮らしの中で活かすことを望まれました。
その中から、受け継ぐべき箪笥を見極めるため、「和箪笥診断」のご依頼をいただきました。
時を重ね、美へと昇華した姿を尊重する再生
古民家は丁寧に改修され、新たな生活空間として生まれ変わりました。
ご依頼主が望まれたのは、全面的に修復し新しい姿へ戻すことではなく、
百年以上の時を経て、美へと昇華したその姿を尊重したお手入れとメンテナンスでした。
しかしながら、
・長年の保管により付着した汚れ
・内部に残る樟脳の香り
・引き出しの開閉の重さや歪み
など、日常生活の中で実用的に使用するためには、適切な調整が必要な状態でした。
また、衛生的に改修されたリビング空間において、安心して使用できる状態に整えることも求められました。
歴史を消さず、暮らしに寄り添うための再生
今回の再生では、
・表面のクリーニング
・内部の清掃と臭気の軽減処置
・抽斗の調整
・構造の安定化
を中心に行い、過度な修復は避け、時代が刻んだ風合いをそのまま活かすことを重視しました。
それは、単に家具を整える作業ではなく、
この家が歩んできた歴史と、そこに生きた人々の営みを、未来へとつなぐ仕事でもあります。
商いの記憶を宿す箪笥が、再び暮らしの中へ
明治という激動の時代を経て、
商いの現場で使われ、家族の暮らしを支え続けてきた箪笥。
百年の時を越え、今、新たな住まいの中で再び使われ始めています。
時代箪笥は、過去の遺物ではなく、
これからの暮らしの中で生き続ける存在です。
和箪笥修復家の役割とは、
その価値を見極め、未来へと受け継ぐ橋渡しであると考えています。



















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