明治初期の衣装箪笥 ビフォーアフター
山形県河北町在住/岡﨑/60代ご夫妻
ご自宅の奥座敷に、長く大切に保管されていた
明治初期の衣装箪笥。
この時代の和箪笥は、現存している例自体が少なく、
当時の暮らしや価値観を知るうえで、たいへん希少な存在です。
山形県において箪笥が一般に普及するのは明治中期以降とされており、
明治初期に箪笥を所有していたという事実からも、
当時、裕福で格式あるご家庭であったことが窺えます。
ご主人から拝見した家系図は、何代にもわたって続く旧家の系譜。
その歴史を前に、この箪笥が辿ってきた時間の重みを
自然と受け取ることができました。
失われた意匠も、家の歴史
本来、この箪笥の中央には
**縦型の平板(縦カンヌキ)**が据えられ、
錠前としての役割と意匠性を兼ね備えていました。
残念ながら、その部位はすでに失われており、
復元のご提案もさせていただきましたが、
「無くなってしまったことも、この家の歴史ですから」
そう語られたご主人の言葉には、
先祖を敬い、ありのままを受け止める温かな想いが込められていました。
修復を決めた理由
今回、和箪笥の修復再生を決意された背景には、
ご主人ご自身の人生の歩みがありました。
これまでの人生を振り返る中で芽生えた、
先祖を偲び、家系を辿りたいという想い。
役場に足を運び、
これまで知らなかった先祖の存在を知り、
ご自身の手で家系図を作り上げていかれたそうです。
この箪笥を「もう一度、使える形にしたい」と思われたのは、
単なる家具の修理ではなく、
先祖への敬意そのものだったのだと思います。
金具に込められた意味
引き出しに取り付けられた錠前金具には、
「蔦(つた)」の葉が描かれています。
蔦の葉は、古くから女性紋として
着物や装身具にも多く用いられてきた意匠で、
旺盛な生命力から
-
長寿
-
子宝に恵まれる
といった意味が込められています。
この家の中で、
幾世代もの暮らしを見守ってきた箪笥であることを
静かに物語る装飾です。
お届けの日に
お届けの際、ご夫妻からこんなお言葉をいただきました。
「これは、家のタンスですか?」
「見違えて驚きました。良い色合いですね。」
当初は、客人を迎える玄関ホール正面への設置をご検討されていましたが、
ご夫妻の想いを伺いながら、
茶の間への設置をご提案させていただきました。
客人と家族が集い、
日々の暮らしの中で自然と目に触れ、
装飾を愛でながら、生活用品を収める——
「見せる家具」と「使う道具」、
その両方を兼ね備えた存在として、
これからの暮らしに寄り添う在り方です。
これからの時間へ
整理し、手入れをし、
日々の暮らしの中で触れ続けること。
その積み重ねが、
この箪笥に刻まれてきた歴史の続きを
静かに紡いでいくのだと思います。



















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