明治の初め頃、武士の内職で箪笥づくりが営まれていた。初期のものは金具の装飾がシンプルで、主座敷の押入下に収められ、上は唐紙の押入として使われていた。
次に錠前に鶴・鳳凰・孔雀など鳥形が現れ、木材も桐から欅やクリ板に変わってくる。この時代までの金具には打出しはなく、閂錠と線彫り平金具は初期の形式である。やがて打出し金具・浮彫の技術ができて菊座に木瓜引手が取付られるが、これは過渡期の産物で明治二十年代までのもの。
これに続くものとして出てくるものは、菊唐草文様の打出し金具で、仙台箪笥の中で一番安定した作風を示すもので、数も沢山作られ遺物も多い。これは大正の中ごろまで生産された。
仙台箪笥で一番ダイナミックな形式は、明治末頃に現れる竜・虎や唐獅子・牡丹の躍動美あふれる大型打出し金具である。共通の側板と棚板の縁塗は、佐渡箪笥などにつけられた黒鉄の縁金具にあやかったもので、意匠的にも効果があり、船箪笥の影響がこんな所にも現れておもしろい。
時代箪笥
種類: | 衣裳箪笥 |
産地: | 宮城県仙台地方 |
時代: | 明治期 |
寸法: | 幅121×奥行44×高93㎝ |