明治の名工が手がけた、庄内箪笥

想いを託された再生のカタチ

神奈川県川崎市在住/下里様/60代男性

ご依頼主は神奈川県川崎市在住の60代男性。
庄内地方・酒田出身のお母様のご実家に幾度も帰省された記憶が、
今も鮮やかに残っているといいます。

「山形への想い」——それはご家族への敬愛、
亡き母への想いと重なりながら、「形あるもの」として遺したいという願いに変わっていきました。

探し求めたのは、明治期につくられた良質な庄内衣装箪笥。
全国でも人気の高い庄内箪笥は、重厚な鉄金具に細密な打ち出し文様を施した芸術性の高い一品。
今回の箪笥も、その中でも特注品と見られる逸品で、
当社がこれまで修復してきた700棹以上の中でも上位に数えられる良品です。

ご依頼主は20年にわたり当社をフォローしてくださっており、
「いつか自分の手で良い庄内箪笥を迎えたい」と想いを温め続けておられました。
退職を機にその夢が実現し、ネットオークションで本箪笥を入手。
再生を当社に託していただきました。

再生工程のご紹介
古き良き箪笥を、次の世代へと受け継ぐために。
私たちは、外観の美しさだけでなく、長く安心して使っていただける
「構造の健全性」にもこだわって修復を行っています。

1. 解体・内部点検
全ての引き出し・扉・金具を取り外し、構造体のゆるみや歪みを丁寧にチェック。
内部の割れや虫食いが見つかった箇所は、適材で補修・補強を施しました。

2. 木地調整・研磨
時を経た木肌には独特の風合いがありますが、表面の汚れや痛みを丁寧に研磨し、
木の持つ本来の美しさを引き出しました。

3.木部の洗浄
薬品を使用して、箪笥本体・引き出し内部に沁み込んだ汚れや臭いを除去しました。

4. 塗装仕上げ
元々の意匠を損なわないよう、深みのある色合いの木地呂漆調塗装を採用。
木目が映える塗り上がりで、上質な存在感を保ちつつ、
現代の住空間にも自然に溶け込むよう配慮しています。

5. 金具の研磨・再着色
庄内金具の魅力はその厚みと精巧な打ち出しと彫り。
サビや汚れを研磨し、一点一点手作業で黒染めし直すことで、
金具本来の美しさと重厚感を蘇らせました。

6. 金具の取り付け・最終調整
取り外した金具をもとの位置に取り付けます。
各部の動作確認や調整を経て完成。
細部に至るまで、妥協のない仕上げを心がけました。

お客様の声(お届け後のお電話より)
「丁寧なお仕事ぶりが仕上がりから見て取れます。ヤマヒョウさんにお任せして本当に良かったです。
わが家の歴史を辿る伝道師として、これから愛用していきたいと思います。」

この一言に、すべてが報われる思いがいたしました。

ご遠方にも関わらず、全幅の信頼を寄せてご依頼いただいたこと、心より感謝申し上げます。
ご家族の想いと地域の工芸文化が重なり合い、新たな物語がここから始まる——
その一助となれたことを、職人一同、誇りに思います。

ヤマヒョウ家具修復家

「よみがえれ、時代箪笥!」
日本の古箪笥に魅せられること52年…地域文化や民衆の知恵から誕生した美しき和箪笥は100年を経てた現代でも私達を魅了し続けています。

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