昭和初期の米沢箪笥 ビフォーアフター
山形県山形市在住/齋藤様/50代ご夫妻
山形県長井市。
奥様のご実家の小屋二階に、長年保管されていた一棹の箪笥。
この箪笥は、数十年前にご実家が火災に見舞われた際にも、
焼失することなく残ったものです。
外見には、水をかぶったかのような水垂れの跡が全体に残り、
あの日の記憶をそのまま留めていました。
その後は使われることなく、
「いつか、日の目を見る時が来るだろうか」
そんな想いとともに、当時のまま静かに保管されてきました。
今回ご依頼いただいたのは、50代のご夫妻。
「捨てるには忍びない。しかし、このままでは使えない」
そんな想いからご相談をいただきました。
この箪笥は、昭和初期に作られた米沢箪笥(置賜箪笥)。
置賜地方に広く普及した衣裳箪笥で、東北地方では福島県二本松の箪笥と並び称される大型の家具です。
実は今回に先立ち、以前にも一棹の時代箪笥を修復させていただいたご縁がありました。
「もう一棹、いずれは」
そうお話しされていた記憶が、今回のご相談でよみがえります。
長い年月を経て残された一棹。
その想いに応えるべく、丁寧に解体から作業を進めました。
まず金具を一つひとつ本体から取り外し、
積み重なった古い塗膜を削り落とします。
木部は傷みの状態を見極めながら修復と洗浄を施し、
素地の表情を整えていきます。
そのうえで、木地の風合いを活かす塗装を行い、
本来の佇まいを引き出します。
金具は錆を丁寧に落とし、再塗装のうえ再び用います。
腐食や紛失したものについては、当時の意匠に合わせて復元しました。
残せるものは活かし、
失われたものだけを補う――
時代の痕跡を受け止めながら、
箪笥本来の姿へとよみがえらせていきます。
そして――
再び、ご夫妻の暮らしの中へ。
納入後、箪笥は空間に静かな存在感をもたらし、
長い時間を経て、ようやく“迎え入れられた”ことを感じさせてくれました。
受け継がれ、残り、そして再び使われる。
箪笥は、ただの家具ではなく、
時を越えて“家族の記憶”を宿し続ける存在です。
もう一度、命を宿す。




























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