やまがた時代箪笥 ビフォーアフター
山形県天童市在住/結城様/50代ご夫妻
今回は、50代のご夫妻からご依頼をいただき、大正から昭和初期にかけて作られた「やまがた衣装箪笥」の修復再生をお手伝いさせていただきました。
傷跡を癒やし、機能を叩き直す。職人の手仕事で「蘇る、一棹」へ
お預かりした当初の箪笥は、長い年月を経て確かに枯れた味わい深さはあったものの、無数の傷跡や塗膜の劣化が目立ち、建付けの悪さなど家具としての機能性は大きく衰えてしまっている状態でした。
「家具を捨てるを、なくす。」 その想いを胸に、今回の修復では一度すべての金具を取り外してサビや汚れを落とし、きれいに塗り直しました。木部は地道な削り作業によって表面の傷を整え、構造の歪みも現代の暮らしで実用できるレベルへと根本から叩き直しました。
職人の手によって弱っていた命を吹き込まれ、本来の凛とした気品と使いやすさを取り戻した「蘇る、一棹」の姿がここにあります。
暮らしの顔として、お客様をお迎えする玄関ホールへ
納品場所は、ご自宅の「玄関ホール」です。 一歩足を踏み入れた瞬間、美しく蘇った和箪笥が圧倒的な存在感を放ち、我が家を訪れるお客様を温かく、そして格調高くお迎えする特別なアイテムとなりました。モダンな住まいの中に日本の伝統美が心地よく溶け込む、本当に素敵な空間です。
変化する時代の中で、社会人の息子さんたちへ送る「無言のメッセージ」
今回の納品で最も私たちの心に深く残ったのは、お届けした際にご家族の皆さまで撮影した記念写真でした。
日曜日の納品ということもあり、当日はそれぞれ社会人として自立し、お忙しい日々を送られている息子さんお二人も立ち会ってくださいました。ご家族4人が揃って、新しく生まれ変わった箪笥の門出を祝う姿は、言葉にできないほど温かいものでした。
先祖が大切に愛用してきた衣裳箪笥を、決して手放すことなく、手間と費用をかけて丁寧に再生する――。
そのご夫妻の後ろ姿は、社会人としてこれからの時代を生きる息子さんお二人に対する、「物を大切にすること」「先祖からの血の繋がりや家族の歴史を重んじること」の価値を伝える、何よりの“無言のメッセージ”のように感じられました。
美しく蘇った箪笥を前にしたとき、息子さんお二人の胸には何が去来したのでしょうか。先祖の品をただの古いものとして片付けず、こうして受け継いでいくことの本当の価値を、その真っ直ぐな眼差しからしっかりと受け止められているように見えました。
「先祖のタンスを修復再生して、再び暮らしの中で使う。そして、次の世代へと受け継がれていく」
まさにその歴史的なバトンが渡される瞬間を、私たちは目の当たりにさせていただきました。ただ家具を修理するだけでなく、ご家族の歴史と未来を繋ぐお手伝いができたのだと、職人冥利に尽きる最高の時間をいただきました。
ご依頼いただいたご夫妻、そして温かく迎えてくださったご家族の皆さま、本当にありがとうございました。新しくなった衣装箪笥と共に、これからの日々がより豊かなものでありますように。




























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