三つの時代を受け継ぐ和箪笥。ご家族が選んだ「未来へ残す一棹

昭和の桐箪笥 ビフォーアフター

山形県酒田市在住/佐藤様/50代ご夫妻

【概要】

ご自宅に大切に保管されていた、明治・大正・昭和の三つの時代を生き抜いてきた和箪笥。

一棹の桐箪笥の再生をきっかけに始まった、100年の歴史を未来へと手渡す、あるご家族と職人のストーリーをご紹介します。

【本文】

1. おばあ様と共に託された、昭和初期の桐箪笥

お客様のご自宅には、明治期の「庄内箪笥」、大正期の箪笥、そして昭和初期の「桐箪笥」と、三つの時代を受け継いできた和箪笥が大切に残されていました。

ある日、「この箪笥をもう一度使えるようにしたい」と、おばあ様もご一緒に当店へと桐箪笥をお持ち込みくださったのが、最初のご縁でした。

これからの暮らしの中で「普段使いとして使っていきたい」とご主人が選ばれた昭和初期の桐箪笥は、長年の使用により木肌に汚れや傷みが見られましたが、おばあ様をはじめとするご家族の想いがぎゅっと詰まっているのが伝わってきました。

私ども職人は、桐本来の美しさを取り戻すよう丁寧に洗い、削り、建て付けも調整。これから先も日常で安心してお使いいただける一棹へとよみがえらせました。

2. 四世代で迎えた、お引き取りの日

無事に再生が完了し、お引き取りの日。 工房には、ご夫妻、娘様、そして2歳になられるお孫様が、わざわざ皆様でご来店くださいました。

綺麗に蘇った桐箪笥をご覧になり、ご家族で喜びを分かち合う中、ご夫妻は娘様へ「もう一棹の箪笥も残していこう」と、その想いを優しい笑顔で伝えられました。

おばあ様が最初にお持ち込みくださった箪笥が、今度は小さなお孫様が生きる未来の日常へと引き継がれていく。まさに「四世代の絆のバトン」が繋がった瞬間を目の当たりにし、私自身、胸が熱くなると同時に、改めて深く考えさせられました。

3. 明治期の「庄内箪笥」に宿る歴史と、新たなる決意

なぜ、私たちは先祖の箪笥を直してまで残すのか。 それは、古い家具を残すことだけが目的ではありません。ご先祖様やおばあ様が大切に使い続けてきた証を受け継ぎ、ご家族の歴史とともに次の世代へ手渡していくこと。その本質的な価値を、ご家族皆様で共有されている姿に深く感銘を受けました。

そしてこの日、もう一つ嬉しいご相談をいただきました。 当方の「和箪笥ミュージアム」で地域ごとに異なる時代箪笥の意匠をご覧いただいた際、奥様が特に深い関心を寄せておられた、もう一棹の「明治期の庄内箪笥」の修復・再生のご依頼です。

この庄内箪笥は、京箪笥の意匠を感じさせる黒漆塗りを基調としながら、北前船交易で栄えた酒田ならではの「船箪笥づくり」の技術が金具細工に息づく、文化的価値の極めて高い逸品でした。ご家族で話し合われた結果、この歴史ある一棹も、私どもにお任せいただける生活の道具として修復されることになりました。

4. 「家具を捨てるを、なくす。」その想いを未来へ

家具を修復することは、ただ古いものを新品に戻すことではありません。そこに刻まれた時間やご家族の想いを、未来へ受け継ぐことです。 お客様ご家族から、その大切な意味を改めて教えていただいた、誇り高い修復事例となりました。

これから、明治期の庄内箪笥の修復に入ります。 おばあ様やご先祖様の想いをのせて、ご家族の歴史、そして小さなお孫様の成長を末永く見守り続ける存在となるよう、職人一同、心を込めて再び命を吹き込んでまいります。

家具を捨てるを、なくす。 その一棹に宿る歴史を、これからも未来へつないでまいります。

ヤマヒョウ家具修復家

「よみがえれ、時代箪笥!」
日本の古箪笥に魅せられること52年…地域文化や民衆の知恵から誕生した美しき和箪笥は100年を経てた現代でも私達を魅了し続けています。

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